行動経済学でわかる「値づけの科学」

永井孝尚

最新のマーケティング戦略理論や行動経済学の本格的な知識を両立できるように書かれている。

行動経済学と価格戦略

儲かるかどうかは価格戦略次第。行動経済学でユーザーのインサイトを読み解くことが重要
・人間は合理的に行動していない。価格戦略を考えるには、行動経済学を学ぶ
・アンカリング効果で、人は無意識に最初に見せられた数字に大きく影響される
(例)結婚指輪は給料の3ヶ月分(高級指輪会社のプロモーションが社会現象に)
・価格破壊に成功すると、安売りイメージが定着し、高い価格で売れなくなる
・プロスペクト理論がわかれば、安売りして元の価格に戻すと売れない理由がわかる
(例)ボーナスが1万円増える喜びよりも、1万円減る損失感の方がショックが大きい
★得するより損をしたくないのが人の本質

コストリーダーシップ戦略

常識を疑い、当たり前をやめ「やらないこと」を徹底して価格破壊する
・ライバルよりコストを抑え、競争で優位に立つために何を「やらない」かを決める
・EDLP戦略とは、常に最低価格を固定して、特売セールをしない(安くて安心/最安値の信頼)
・コスト削減をサボった値下げは「麻薬」である(その時だけ売れるため)
従業員や取引業社に無理をさせざる負えなくなる(ブラック化)
・安くしても低価格には頼らず、価値を要追求(より安いライバルが出現)

無料のビジネスモデル

無料にすることで出費の痛みが消え、ユーザーが急増。高品質なものを無料で提供、儲ける仕組みを
・無料は出費の痛みをなくすというポイントを抑えれば、ビジネスにうまく応用できる
・無料ビジネスには4タイプある
①他の有料版で稼ぐ=携帯電話
②広告で稼ぐ=googleアドセンス
③プレミアム顧客が負担=クックパッド
④社会貢献活動=wikiペディア)
・無料だからこそ高品質に(低品質の無料版を大量に配る=悪い評判を広げているようなもの)

適応型プライシング、保有効果、クーポン

値引きは最終手段。使わないことに意味がある。条件を決めユーザーごとに価格を変える
・うまく値引きするため「最初は高い価格で」「値引き条件をオープンに」「条件付きで値引きする」の3つのを守る
・値引きするなら、ニーズに応じて価格を変える「適応型プラシング」が有効
(例)70代は食べ放題1,000円引き(食べられる量は年代で違い、年齢で値引率を変える)
・クーポン多用には注意(やりすぎると価格目当てのユーザーだけに)

フレーミング効果

値下げしなくても、価格の見せ方を変えれば、割安感は出せる
・松竹梅マジックは強力、売りたい商品に竹を持ってくる
・商品点数は増やさない、むしろ減らす
・端数価格効果で割安感が出る(980円)
・バンドリング(まとめること)で割安感が出る

バリューポジションとブルーオーシャン戦略

ユーザーが希少性を求めれば高額でも売れる。ユーザーを見極め適正な価格を決める
・バリュープロポジション(ユーザーが必要としている、競合が提供できない、自社だけの価値)を考える
・競合と自社を比較して、ブルーオーシャンを目指す

値ごろ感と価格設定方法

売れない理由は「商品に魅力がない」か「値ごろ感がない」この2つだけ。値ごろ感こそ価格設定のキモ
・価格には品質表示機能がある(高い方が効果が出ると錯覚)
・高額になればやばい客は減る
・値ごろ感の4段階を意識する(安すぎて怪しい、安いけど良い商品、高いけどさすがだ、高すぎて買えない)

感想

値付けの本はいくつか読んだことがあるが、本書は事例が多く、ノウハウが凝縮されていて、短時間で読める仕様になっているのがよかった。マーケティングの本は横文字と長ったらしい理論的な説明が多く、結局何が言いたいのかわからなくなりがちだが、本書はわりと端的にまとまっていて、事例が多いので満足感が高かった。

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