ブランディングの教科書

羽田康祐

ブランディングについての書籍は様々な切り口の本があるが、本書はブランドマーケティングの戦略部分に絞った内容(主にBtoC)で紹介されている。

欧米の企業では「ブランド構築」はマーケティングの上位に位置付けられ、マーケティング活動そのものを規定するための「上位戦略」とされているが、日本の企業は「ブランド構築」を重要な戦略と捉えておらず、マーケティング活動の結果として「自然に生まれるもの」だと誤解しているため、ブランディングが下手だと言われている。

ブランディング(戦略)とは抽象的な概念で、人によって定義が曖昧。本質を理解しないと小手先の手法を延々と繰り返すハメになり、ビジネスを間違った方向で効果の上がらない施策(戦術)を繰り返してしまう。

<ブランディング=戦略(方向性)→戦術(個別施策)>

ブランドとは(定義)

生活者から見た独自の役割を築き、「感情移入」が伴ったモノやサービスのことであり、どのようなモノやサービスも「感情移入」が伴った時、その人にとっての「ブランド」に変わる。一度ブランドを確立してしまえば、「販促による衝動買い頼み」から脱し「指名買い」という次のステージへ。

・感情移入=ブランドの連想→価値(喜び)→欲しい
・企業都合、モノ起点、どう売るか?→企業視点×
・生活者都合、顧客起点、感情移入重視→消費者視点◯

ブランディングの種類

(何を?)商品・サービスブランディング、企業ブランディング
(誰に?)自社の外側(消費者や顧客)、自社の内側(従業員)
(誰が?)BtoBか?BtoCか?

ブランディングの戦略立案

①ブランディングの意味・メリット・必要性を明確化し、チームで共通認識を持つのがスタートライン

②PEST分析・3C分析を用いて、ブランドを取り巻く世の中の流れを捉える(ビジネスの機会・課題の抽出)

③ブランド戦略を策定する→ブランドアイデンティティ(より良い社会の姿)、ブランド提供価値(=喜び)、ブランド知覚品質(認識してもらうべき品質)、ブランド連想(際立つための連想)、ブランドパーソナリティー(個性や態度)を定義する

④ブランディングの評価指標を設定する→ブランドエクエティ=ブランドを数値化(見える化)して評価・管理する(例):ブランド認知度を図る指標[ブランド純粋想起率]=商品カテゴリーを提示、ヒントを与えず、知っているブランド名を言ってもらい、自社ブランドをが挙がった割合

⑤STP戦略を策定する→マーケットセグメンテーション=隠れた市場機会を発見することを目的に市場を細分化すること(例):市場を拡張する→一般的なメガネチェーン=視力が悪い人(ターゲット)、JINS=視力が正常な人(ブルーライトカットメガネで新たな市場を作ることに成功)

⑥ブランドのデザインポリシーを策定する→デザインは第一印象を決める重要な戦略。人は外界から受け取る視覚による情報は80%以上を占める。人は文字情報より「色」や「形」で物事を認識、それがブランド連想のトリガーとなる

感想

ブランドマーケティング戦略の大まかなステップとアプローチの方法を具体的に整理することができた。
小手先のPDCAではなく、大きな方向性を明確にしたブランディング戦略を立てずして、事業の大きなステップアップは難しい。
企業都合の考え方ではなく、消費者や社会側に立った視点でブランドをつくっていくことが大事である。

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